自分は基本的に競馬などの公営ギャンブルはやりません。
たまに賭けることはあっても、500円とか1000円とかのほんのお遊びレベル。
TIPSTARで競輪はやってますが今までに一円も課金してないので、これはギャンブルと言えるのかどうか。
(ちなみにTIPSTARでは無課金でいままで2万円強のプラス)
とにかく私は今まで公営ギャンブルにあまり興味を持っていませんでした。
その理由は単純で公営ギャンブルはほぼ確実に負けるから。
なにしろ、公営ギャンブルの払い戻し率はおおよそ75%。
これがどういうことかというと、100万円を一回、賭けて平均的な成績をあげると、75万円になるということ。
そして次にその75万円を賭けると56.25万円になってしまうわけで、こんなのほとんど罰ゲーム。
期待値がプラスの株式投資とは比べるべくもありません。
なので、競馬で儲けるなんて不可能だと思っていたし、かたわらに競馬で儲けてやろうと本気で思っている人がいたら、憐憫の視線さえ送っていました。
期待値がプラスの株式投資と期待値がマイナスの公営ギャンブルでは、成績をプラスにするための難易度が段違い。
わざわざ難易度が高いところで勝負しようとしているのはバカすぎる。
しかし、最近、ひょっとしたら競馬(≒公営ギャンブル)で儲けることは可能なのかもしれないと思うようになりました。
そう思うようになったきっかけは、穴馬の存在です。
穴馬というのは、goo国語辞書に よると、「競馬で、番狂わせで勝ちをおさめそうな馬」だそうです。
つまり、オッズが高く、当たれば万馬券になるような馬、ということです。
言いかえれば、夢を見れる馬、ということになります。
たまにニュースになったりしますよね。100円が何千万になった万馬券が出たというのが。
さて、ここで有名な投資本である「ウォール街のランダムウォーカー」のなかに、競馬の穴馬についての一文があったので紹介してみたいと思います。
投資家は、確率は低いが一攫千金の可能性のあるかけ事には、不当に高い値段を払うこともいとわない、強い傾向があることが知られている。これを競馬の例で考えてみよう。もしレースに参加するすべての馬の馬券を買えば、必ず勝ち馬を当てることができる。しかし、勝ち馬券を換金してみると、支払った金額より20%ほど少ない金額しか回収できないことに気づくだろう。というのも、競馬の主催者側が運営経費や税金、利益などの名目で、かなりの金額を差し引くからだ。もしすべての馬に機械的にかけ続ければ、元手は確実に20%ずつ目減りしていく。
次に、どのレースでも確率は低いものの当てた時の賞金が非常に大きい、いわゆる「穴馬」が存在する。この穴馬に賭けて、どのレースでも穴馬馬券だけを買い続ける戦略を取ったとしよう。時には大穴を当てることもあるだろう。しかしこの戦略を続けると、平均的には元手の約40%を失うことになる。一方、本命馬だけを買い続けた場合は、約3回に1回は勝ち馬に当たる。それでも長期的には元手は目減りするが、5%程度の損失で済む。
個々の馬に関して、例えばステロイド剤を打たれているといった内部情報が入れば別だが、必ず勝ち馬を当てる秘策などありえない。しかし長期平均的に言えば、常に本命に賭けるやり方のほうが、大穴に賭けるよりは遥かにダメージは少ない。にもかかわらず、かけ事の好きな連中は、大穴を当てるかもしれないリスクに負けて、穴馬馬券に払いすぎるのだ。掛け率を見れば儲かるかどうかのおおよその見当はつくのだが、参加者の多くは本命には厳しく、穴馬には甘めの評価を下す傾向がある。
この文章からするとアメリカの競馬の払い戻し率は80%みたいですね。
そして、穴馬に賭けると平均よりも20%マイナスの成績(払い戻し率でいうと60%)。
本命に賭けると平均比で15%のプラス(払い戻し率でいうと95%)、ということになるらしい。
つまり、穴馬(≒万馬券)は実際の実力よりも、かなり高く評価されている、つまり買われすぎているということになります。
この事情は実際に競馬をお遊び程度にやった経験のある人なら、よくわかるはずです。
たとえば、お遊び感覚で1000円を賭けたとします。
その程度の額を賭けた場合、もしもオッズが2倍の場合、当たったところで1000円が2000円になっただけ。
そんなのはつまらない。
なので、オッズの高いところを探して賭ける。このとき、その馬が実際に来るかどうかは考慮にいれてない。
それよりも、1000円が何万円、もしくは何十万円に化けることの夢を一瞬でも見られることのほうが楽しいし有意義。
このパターンで競馬に賭けたことが自分はいままで何回もあります。
この賭け方をして、当たった試しはありません。
そして、こういう賭け方をしているのは自分だけではない。
そもそも競馬で生計を立てていこうと思っている人はおそらくほとんどいないはずです。
一瞬の夢を見たくて娯楽で賭けている人が大半でしょう。
夢を見られる穴馬が人気になるのも当然です。
効率的市場仮説
先に紹介した「ウォール街のランダムウォーカー」の主旨をかいつまんでいえば個別株投資はむずかしいからインデックス投資 が最強ということです。
なぜ、個別株投資はむずかしいかという理由の一つとして効率的市場仮説があげられます。
効率的市場仮説とは簡単にいえば、株式市場で儲けることはできない(≒きわめてむずかしい)ということです。
なぜなら、ある会社がポジティブorネガティブな情報を出しても、市場はその情報をあっという間に取り込んでしまう。
つまり、情報は瞬時に広まってしまうため、投資家はその情報格差で儲けることはできない。インサイダーでもない限りは。
アメリカ株なんかだと、なにか情報が出た瞬間にぱっと瞬間的に株価が動くのを目にします。
アメリカ株に投資しているのは、なにもアメリカ人に限らず、全世界の投資家が鵜の目鷹の目で儲けられる可能性を探っているわけですから、情報が瞬時に広まるのは当然です。
逆に日本株、それも名証だったりすると、誰も注目していないため、ぜんぜん株価が動かないなんてことも、よくあります。
効率的市場仮説が前提としているのは、それなりの数の投資家が市場に参加していて、しかも投資家は合理的に行動するという前提です。
もしも投資家すべてが合理的に行動するなら、株価と実際の企業価値のあいだにギャップは存在しないので、見直し買いが発生することはありません。
なので、インデックスを買って、全体の経済成長の恩恵を待つほうがはるかに楽で低コストで有意義だということになります。
さて、ここで競馬の話に戻ります。
競馬の参加者は合理的に行動していません。
もちろん、オッズがある程度実力を反映したものであることは間違いないでしょうが、そこには強いバイアスがかかっています。
穴馬が過大に評価されてしまっています。
この歪みをうまく利用すれば、平均をアウトパフォームすることは簡単そうです。
そして平均を25%以上、アウトパフォームすれば競馬で儲けている状態になるわけです。
実際に、競馬の予想ソフトに独自の改良を加え、実利益1億5500万円を稼いでいた会社員が脱税で起訴されるなんていう事件もありました。
競馬予想ソフトで5億7千万円脱税!?その驚きの投資方法と結末を紹介
この人の回収率は104%だったようです。
この記事を読んだだけでは、どういう理屈でプログラムを組んでいったのかはわかりませんが、競馬における強いバイアスがこうした競馬必勝法的なものを生み出している要因であることに間違いはないでしょう。
競馬というものは「どの馬が上位に入るのかを当てるゲーム」だと思われていて、もちろん、それは正しいんですけど、あくまで物事の一面でしかない。
競馬も株式投資と同じく、参加者の認知にかかっているバイアスをいかに利用するかというゲームでもあるわけですね。