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コロナショック後の紳士服業界を見てみよう(AOKI、青山商事)

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昨年、紳士服業界の記事を書いたことがあります。

 

まぎれもない斜陽産業、紳士服業界を見てみよう(青山商事、AOKI)

 

まぎれもない斜陽産業、紳士服業界を見てみよう(コナカ、はるやま)

 

今回のコロナショックは紳士服業界にも多大な影響を与えました。

なにしろ、2月、3月といえば紳士服業界の書き入れ時。

それなのに、入社式の延期や、外出控えで流れてしまったわけですから、被害も甚大です。

 

それに加えて、リモートワークの推奨、また定着化などによって、スーツ離れがなお一層、進むかもしれません。

 

ということで、今回は紳士服業界の最近の決算などを軽く見てみたいと思います。

 

 

 

 

AOKI(8214)

 

まずは売上2位のAOKIです。

1~3月の既存店売上(ファッション事業)から。

 

1月 93.7%

2月 109.4%

3月 67.1%

 

3月は当然ひどいものの、コロナの悪影響がまだ小さかったとはいえ、2月がわりかし健闘してます。

ただ、これはAOKIに限った話ではなく、青山以外の3社はどこも2月の売上100%超えと好調でした。

10月の消費増税以降、各社とも売り上げは低迷していたものの、2月には増税の影響が薄まっていたように見えます。

コロナがなければ、3月もそれなりによかったのかもしれません。

 

AOKIのユニークなところは、本業は衰退していくものの、これからの成長が期待できる複合カフェ事業(快活club)を持っている点。

また、最近は複合カフェに併設している24時間のスポーツジム(fit24)をかなり開店していました。

 

スポーツジムはクラスタ発生源と名指しされたりなど、コロナショックをまともに受けた業態。

決算説明資料によると2500名以上の退会者が出たそうです。

 

さて、2020/03期の決算は最終的にこうなりました。

 

AOKIの2020/03期決算

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 経常利益は55億円ですが、減損処理で37億円を計上したため、最終利益は4.4億円。

この数字をどう見るかは人それぞれでしょうが、この状況で黒字確保しているのは評価されるべきでは、と思います。

 

それから、2020/03期の配当は中間で23円、期末で23円。

合計46円と現在の株価696円からすると、配当利回りは6.6%になります。

来期予想が未定であるため、来期の配当も未定にはなっていますが、ここ数年、AOKIは増配を続けてきました。

 

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2019年から2020年にかけて減配しているように見えますが、2019年は記念配当が15円のっているため、通常配当で見るとわずか1円ですが増配になります。

 

AOKIはコロナで中止になったものの、自社株買いをしていたり、増配に積極的だったり、株主重視の印象。

これは単純に、大株主に青木一族が名を連ねているという単純な理由によるものかもしれませんが。

 

各セグメントの状況

 

 ファッション事業の出退店はトータルでマイナス59店舗。

一方、快活clubの出退店数はプラス83店舗。

スポーツジムのfit24も28店舗を出店と攻勢を続けています。

 

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2020/03期の売上構成ではファッション事業の比率がまだ高いんですが、利益ではファッション事業とエンターテイメント(快活club、fit24) がほぼ同じ水準になってます。

 

青山商事(8219)

 

業界売上1位の青山商事です。

 

既存店売上高は

 

1月 82.3%

2月 85.8%

3月 58.8%

 

でした。

 

それほどコロナショックの影響が少なかった2月の売り上げが他3社と比べると悪いし、3月も比較的悪い。

 

これはなぜなんだろうと疑問に思っていましたが、決算説明資料を見て、その理由が判明。

 

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これまでは店頭交渉やクーポンによる値引き前提の価格設定をやめ、最初から値引きした価格で販売することにしたとのこと。

 

「洋服の青山」社長が謝罪!? 分かりにくい価格表示を改める | WWD JAPAN.com

 

 「4万9000円のメンズスーツは2万9000円に」なったそうです。

 

というか、紳士服業界にそんなに値引き余地があったんですね。

あまりスーツを買った経験がないので知りませんでした。

 

この価格改定があったのが2019年10月で、その影響から客単価が低迷してました。

これは決算説明資料でも触れられているとおり、この価格改定が周知されていないのが原因でしょう。

 

さて、2020/03期の本決算を見てみます。

 

青山商事の2020/03期決算

 

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一応、営業利益、経常利益ともに黒字をかろううじて確保してます。

しかし、最終利益は169億円の赤字。

 

この主な要因としては、 アメリカンカジュアル事業の整理にともない85億円の損失を計上したことと、リペアサービス事業ののれんを53億円減損処理したことによるものです。

 

この決算を受けて期末の配当は無配となりました。

 

各セグメントの状況

 

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青山の展開している事業はいろいろあるわけですが、順調にいっているのがカード事業とフード事業(焼肉きんぐなどのフランチャイジー)くらいしかないのがつらいとことです。 

 

こうした次の柱が育っていない状態だからなのか、紳士服業態の店舗数が実は横ばいだったりします。

AOKIが紳士服業態の店を大幅に減らし、複合カフェに業態変化してるのとは対照的です。

 

AOKIとの比較でいえば一つおもしろかったのが、青山がこれから手掛けようとしている新規事業。

 

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なんと既存の「洋服の青山」エニタイムフィットネスのスポーツジムを併設する取り組みです。

 

「洋服の青山」からエニタイムフィットネス併設店舗が登場、集客面の相乗効果狙う

 

エニタイムフィットネスは24時間営業のスポーツジム。

AOKIの展開するfit24のパクリ元です。

まさかライバル会社のパクリ元とフランチャイズ契約を結ぶとは。

 

しかし、「洋服の青山」とスポーツジムって相乗効果が生まれるんでしょうか?

 

AOKIのfit24は快活clubに併設されているので、それなりに相乗効果は見込めます。

ジムで汗を流したあとに雑誌や漫画を読んで休憩したあとに帰るなんてのは、その情景が浮かびますし、他のジム(それこそエニタイムとか)との差別化にもつながるでしょう。

また、エニタイムは深夜帯に店員が誰もいないことがあるのですが、fit24は快活clubと併設されているため、快活clubに店員がいるというところはわりかし安心できるポイント。

万が一、ケガしたときなどに誰もいないのはこわいですしね。

 

しかし、洋服の青山とエニタイムのあいだの騒擾効果といわれるとはなはだ疑問が・・・・。

身体が筋肉質になってスーツが似合うようになるってのはあるでしょうが、それを相乗効果とよんでいいのかは疑問です。

 

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紳士服と100円ショップと24時間のスポーツジム。

こう見てみると、お互いにまったく関連性がないのがすごいです。

 

コロナ騒ぎで出鼻をくじかれた格好ですが、今後50店舗ほどを出店する予定だそうです。

この行く末はちょっと楽しみではあります。

 

ってことで、今回はAOKIと青山商事を軽く見てみました。

次回ははるやま商事とコナカを見てみる予定です。

 

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