最近、手間いらず(2477)を買ったので、今日は手間いらずの記事を書きます。
持ち株ということもあり、買い煽りといえば買い煽りなんですが、最後にこの銘柄のネガティブな面についても触れました。
最後まで読めば、買う気は失せるかもしれません(笑)。
手間いらずはどんな会社?
主力はホテルのサイトコントローラー。サイトコントローラーとはじゃらん、楽天トラベルなどの予約サイトを一括して管理できるシステムのこと。
競合相手としてはリクルート系のTLリンカーンや楽天のねっぱんなど。
近年の業績
ここ数年は高い成長性をキープ。
特筆すべきはその高い利益率。
粗利率は92%。営業利益率は70%超となかなか見ない数字。
また投資キャッシュフローの少なさもポイントで、今期の投資CFは220万円、昨期はなんとゼロ。
キャッシュは出ていかず、たまる一方なのでバランスシートはほぼキャッシュであふれています。
コロナ禍における手間いらずの業績
言うまでもなく、手間いらずが主要顧客としているホテルの現状は大逆風下にあります。
直近の決算は8月3日の4Q(4月~6月)決算。
3Qに比べると売上は10%減、営業利益は2.8%減。
QonQでは売上、利益ともに減少しましたが、この期間のホテルの決算がほぼ赤字であることを考えると、コロナの悪影響はそれほどでもありません。
3Qの説明資料では以下のように説明されています。
アプリケーションサービス事業における売上は、主に月額固定収入(月額基本利用料やオプション利用料等)と月額変動収入(予約数に応じた通信料等)によって成り立っています。
当第3四半期において、新型コロナウイルス感染症の当事業の売上への影響は、主に月額変動売上の減少です。通信料が予約数の減少に比例する形で減少しました。
しかしながら、現時点での当事業の売上は、月額固定収入が多くの割合を占めているため、当第3四半期において、新型コロナウイルス感染症は、当社売上に対し重要事実にあたるような影響は及ぼしませんでした。ただし、今後、新規契約獲得の鈍化や閉館等による契約数の減少等も見込まれるため、月額固定収入による売上への影響も見込まれます。
なので、ホテルが倒産したりすると業績に悪影響があるけれど、ただ単に宿泊客が減っただけではそれほどの悪影響はないよ、ということです。
手間いらずの料金は1施設あたり2万円~3万円とそう高くはないので、ホテルの業績が悪化し、経費削減でサイトコントローラー料金をカットする、ということもあまりなさそう。
手間いらずのこれからの成長性は?
実は半年くらい前に一度、手間いらずを調べたことがあったんですが、そのときに疑問に思ったのが「この会社、これからの成長性はどうなんだろう?」ってことでした。
たしかに、過去数年は素晴らしい成長を見せています。
しかし、投資CFがほぼゼロであったりと、将来にむけての種まきをやっているとは思えない。
また、リクルートや楽天のサイトコントローラーと比べたときに、手間いらずの優位性がどこにあるのかがさっぱりわからなかった。
それなのになぜ買ったか?
これは少し考えを改めるところがあったからです。
まず、第一にサイトコントローラーはスイッチングコストが高いサービスだと思われます。
手間いらずが他のサイトコントローラーに対して優位性があるかどうかはわかりませんが、現在、手間いらずを使っているホテルが他のサイトコントローラーに乗り換えることはあまりない。
この理由は単純で、面倒くさいから、です。
別のサイトコントローラーに乗り換えると一から使い方を覚えなきゃいけないわけで、よっぽどサービスに不満がない限り、乗り換えようとはしないでしょう。
そして、次に引用するのは2018年の手間いらずの渡邉社長へのインタビューです。
ブリッジレポート:(2477)手間いらず vol.2 IRレポート「ブリッジレポート」 | ブリッジサロン
御社のビジネスはストック型のビジネスですから、期末のユーザー数が前期末に比べて、どれだけ伸びたかで次の期の売上の伸びが決まってくると思いますが。
渡邉社長: そうですね。それに加えて、新しいバージョンがリリースされていますから、乗り換えてくれると単価が上がります。乗り換えが、どれくらい行われたかも関係してきます。新規で契約されるお客様は新しいバージョンをお使いになります。旧バージョンをお使いユーザーの中には、旧バージョンに満足されている方もいらっしゃいますが、単価に大きな差がなければ、新機能を使いたいという方が少なくありません。新しいバージョンは、従来の業務効率の改善やコスト削減効果に加え、収益向上のための機能が強化されています。コストパフォーマンスの向上につながると思いますから、ご利用頂ければと考えています。潜在需要を顕在化させていくのはこれからです。
新バージョンに移行すると、どの程度、単価が上がるのでしょうか。
渡邉社長: 2割くらいでしょうか。料金は多少上がるけれども、それ以上に成果があがれば、上位バージョンを使う意義があります。
ここで触れられているのはバージョンアップによる値上げですが、昨年は今まで無料で提供されていたオプションを有料にするなどしています。
これは四半期ごとの利益率の変化なんですが、徐々に利益率が上がっているのがわかります。
4Qが3Qに比べて売上が減少したことに触れましたが、実は営業利益率は上がっていたりします。
3Q 66.8% → 4Q 72.58%
さて値上げ余地がどれくらいあるのかについては難しいところです。
「TEMAIRAZU(手間いらず)」について知る | 日本最大級のホテル旅館情報サイト HOTELIER | ホテル旅館サービス・商品比較
このサイトを見てみると、一か月の手数料は
TLリンカーン(リクルート系) > 手間いらず > ねっぱん(楽天)
みたいです。
楽天のねっぱんはもともと無料で提供されていたものなので、小規模施設が多いらしく、とすると直接的なライバルはリクルート系のTLリンカーンということになります。
ということは、まだ値上げ余地があるんじゃないかと思われます。
そもそも現在の手間いらずの月額平均は2~3万円らしいので、他社と比較して極端に高くなければ、乗り換えられることはないでしょう。
ということで買い理由を簡単にまとめると、
手間いらずは乗り換えされにくいサービスであり、また値上げ余地がある。
そのうえ、コロナが落ち着けば新規顧客獲得もこれまでと同じ程度には期待できるのでは?
ということになります。
手間いらずのリスク
ここからは手間いらずのリスクについて触れてみます。
まず、一つ目はこれからホテルの倒産、廃業が増えるであろう可能性。
旅行の醍醐味の一つに誰かに自慢するという一面があり、お土産というものはその自慢の聞き料金的な意味合いがあります。
しかし「旅行することは悪」という価値観がワイドショーなどで流布されている現状では旅行に行きづらいのは当然。
インバウンドも当分期待できないでしょうし。
また、そもそもコロナ以前からホテルは供給過多に陥っていたりと、直近決算ではさほどの悪影響はなかったとはいえ、これからどうなるかは予断を許しません。
ただ、このリスクは既に株価に織り込み済みのようにも思えますが、どうでしょう?
手間いらずを買っている人がこのリスクに無頓着なんてことは考えづらいですし。
今回、手間いらずを調べていて、いちばん引っかかった点は別にあります。
それは従業員の平均勤続年数。
有価証券報告書によると、
手間いらずの平均勤続年数は2年。
いくらなんでも短すぎじゃ?
IT業界の勤続年数は一般的に短いとはいえ、それでも平均は6年くらいです。
openworkという、その企業に勤めていた人が内情を書き込むサービスがあり、そこで、この会社に対する不満を読むことができます。
そこに書かれていた会社に対する不満をつらつら並べてみると、
社長の独断による決定が多く、そしてそれが合理的でない
それを指摘した人はみんなやめさせられた
離職者が多いので、社内で情報の共有ができていない
無償の休日出勤があったり、残業が当たり前の社風
給料があがる見込みがないのでやめた
などなど。
オーナー企業にありがちなトップダウンの社風と残業の多さが不満のもとらしい。
なかには1年で1000人も面接しておきながら、すぐに退職する理由を考えてほしい、と書き込んでいる人もいました。
しかし、1年で1000人も面接してるってのは本当なんでしょうか。従業員は35人しかいないのに・・・。
その真偽はともかく、平均勤続年数が2年というのは厳然たる事実です。
と、このように手間いらずの株を買うにあたっての、自分のいちばんの不安材料は社風です。
あと、無駄に積みあがっているキャッシュをどこに使うのかも気になります。
当記事を書くにあたって参考にした記事