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まぎれもない斜陽産業、紳士服業界を見てみよう(コナカ、はるやま)

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まぎれもない斜陽産業、紳士服業界を見てみよう(青山商事、AOKI) - soright?ブログ

 

 

 

今回の記事は前回の続きになります。

 

今回は売上、時価総額で下位の2社について見ていきたいと思います。

 

コナカ

コナカは紳士服業界では青山商事、AOKIに続いて売上3位です。

しかし、売上規模としては上記2社に大きく差をつけられています。

 

ところでそもそもの話として、みなさんは「紳士服のコナカ」という店をご存じでなんでしょうか?

 

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こういうお店です。

ある人にとってはみなれた光景ですが、ある人にとってはまったくなじみのない光景かもしれません。

というのも、「紳士服のコナカ」は店舗展開に地域的偏りがあるためです。

 

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店舗があるのはほとんど東北と関東だけ、なんですね。

東北、関東以外の地域ではコナカの存在自体を知らない人も多いのかもしれません。

 

 もっとも、コナカが展開している店舗は「紳士服コナカ」以外にもあります。

 

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このなかで紳士服(スーツ)の店は紳士服コナカ、紳士服フタタ、SUIT SELECT、DIFFERENCEです。

 

フタタは九州地盤の紳士服店ですが、2006年にAOKIとTOB合戦をした結果、コナカの完全子会社になったという経緯があります。

 

SUIT SELECTは2プライスのスーツショップです。18000円、28000円などの2つの価格帯からスーツを選ぶ販売店のことです。

似たようなツープライス店は他の大手4社も出しています。

 

参考:スーツ量販店が手掛ける五大ツープライススーツショップの比較 | スーツ男子

 

DIFFERENCEはカスタムオーダースーツを取り扱っています。

 

コナカの売上高構成

 

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重衣料、中衣料、軽衣料と戦車といっしょのカテゴリ分けですね。

 

もっとも重衣料、中衣料、軽衣料というカテゴリわけはアパレル業界では普通のものらしいのですが、これじゃ正直わかりにくいです。

決算短信を見ると、「ファッション」「フードサービス」「教育」の3事業のセグメントになっているんですが、グラフにしてしまうと、ほとんどが「ファッション」事業になってしまうため、むりやり細分化したのかとも思いました。

 

とりあえず、このグラフを見てわかることは、コナカの事業はほとんどファッションだけ(しかも、そのほとんどがスーツ)ということです。

青山商事、AOKIに比べると他事業の売上がほとんどありません。

 

紳士服の売上げが四半期ごとにぶれるであろうことは、門外漢にもおおよそ想像がつくことですが、ほぼ紳士服事業のコナカと他事業が比較的うまくいっているAOKIの四半期業績を比較してみます。

 

コナカの四半期ごとの業績

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AOKIの四半期ごとの業績

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両社とも四半期ごとにブレがあるのは同じですが、コナカが必ず4Qに営業赤字になっているのに対し、AOKIは営業赤字に陥ったのは1回だけ。

紳士服事業の業績のブレを他の事業で緩和しているのが見て取れます。

 

コナカは紳士服以外の事業としては、かつや、自遊空間のフランチャイズをしているみたいですが、なにぶん店舗数が少ないので業績に影響を及ぼすところまではいっていません。

 

こうした紳士服一辺倒の事業ポートフォリオが懸念されてか、コナカのPBRは0.26倍と極めて低い評価を受けています。

 

サマンサタバサを持分法適用会社に

 

事業の多角化を試みた結果なのかどうかはわかりませんが、コナカは新たな一歩を踏み出しました。

サマンサタバサの持分法適用会社化です。

 

2019年9月にコナカの湖中謙介社長の保有株をコナカが取得する形で、サマンサタバサはコナカの持分法適用会社となりました。

 

この一件では「サマンサタバサとコナカが業務提携することでいったい、どんなシナジーがあるんだ?」

と多くの投資家の首をひねらせることになりました。

まさか、コナカの店舗でサマンサタバサのバッグを売るわけにもいかないでしょうし。

 

サマンサタバサは例のセクハラ報道でのイメージダウンもあったのか、ここ数年は業績の低迷が続いています。

 

業績の低迷しているコナカが業績の低迷しているサマンサを子会社化する、という一見するとよくわからないディールです。

ただ以下の記事を読んで、なるほどこういう見方もあるのかと面白かったので紹介します。

 

参考:サマンサタバサが紳士服コナカに買われる意味 | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

もっとも、サマンサタバサの再建がうまくいくかどうかは当然わかりません。

 

 

はるやまホールディングス

 

業界4位のはるやまHDです。

 

メイン事業である「 紳士服のはるやま」は西日本を中心に展開しています。

スーツは比較的、低価格帯のものが多いようです。

 

   時価総額 売上 営業利益 純利益 自己資本比率 PBR
青山商事 95799 250300 14629 5723 56.58% 0.43
AOKI 99986 193918 13382 5400 62.74% 0.65
コナカ 12739 65145 901 -493 65.01% 0.24
はるやま 13369 55554 1829 -248 60.15% 0.36

 (単位:百万円)

 

この表を見てもらえばわかるように、はるやまの企業規模はコナカと同程度です。

東のコナカ、西のはるやまといったところでしょうか。

 

コナカとの比較

 

ここ10年ほどの業績をコナカと比較してみます。

 

コナカ

 

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はるやま

 

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どちらも売上はほぼ横ばいですが、はるやまのほうが業績は安定しています。

営業利益に注目すると、よくわかると思います。

 

おそらく、その理由として考えられるのは、はるやまの紳士服以外の業態です。

 

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このなかの「フォーエル」という業態。

フォーエルという名のとおり、大きなサイズのカジュアル服専門店です。

 

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現在のところ、全国で107店舗を展開しているようです。

「はるやま」が249店、ツープライススーツの「P.S.FA」が80店なので、はるやまHDのなかではかなりの存在感があるはずです。

 

「フォーエル」の売上、利益が知りたかったのですが、はるやまのIRのどこを探しても見つからず。

 

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売上高構成比を見ても、コナカと同じく「重」「中」「軽」の戦車式カテゴリ分けがされていて、よくわかりません。

もっともコナカに比べると軽衣料の割合が高いので、「フォーエル」の貢献度はそれなりにあるのではないかと推測します。

 

株主軽視

 

 今回の記事を書くにあたって、青山商事、AOKI、コナカ、はるやまの4社のIR資料を読んだわけですが、このなかでIR情報がもっともわかりにくかったのは、はるやまでした。

 

たとえば、決算短信などで「どの店を何店舗、出店した(もしくは退店した)」という情報は普通載っているものだと思いますが、はるやまにはその記載がありません。

 

たとえばAOKIの決算短信がこれです。

 

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どの店を出店し、どの店を閉鎖したという情報がちゃんと書かれています。

いっぽう、はるやまがこれ。

 

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グループ全体の店舗数じゃなくて、業態ごとの店舗数を知りたいのに載っていない。

 はるやまのサイトで以下のグラフを見つけましたが、

 

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これまた各店舗数の記載なし(怒)。

 

はるやまには、どうも株主軽視の姿勢が散見されます。

その最たる一例は、買収防衛策を導入しているところです。

 

はるやまの株主構成は

 

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このとおりで、典型的な同族経営です。

 

この株主構成でなぜ買収防衛策が必要なのか疑問に思いますね。

 

会社側の説明によると

 

1 親族のなかには高齢者がいるので、今後、相続でどう株が動くかわからない。

2 親族のなかには経営陣のコントロール下にいない人間もいて、買収者があらわれたとき、賛同にまわる可能性がある。

3 今後、資金が必要なときに増資を行う可能性があり、その場合、現経営陣の持ち株比率が下がってしまう。

 

この3つが買収防衛策を用意している理由だそうです。

 

経営陣の保身しか考えていないクソな理由ですね。

そんなに買収されたくないのなら、上場廃止にすればいいのにと思いました。

 

 

紳士服業界の今後

 

紳士服と聞いてイメージする郊外型の紳士服店、「紳士服の○○」に未来がないことは誰の目にも明らかだと思います。

 

各社とも郊外型店の出店は抑え、都市型のツープライス店(など)に力を入れています。

もっとも、スーツがビジネスウェアとしての地位を失いつつある現在、それらの店も先細っていくでしょう。

 

オーダースーツだけは活況のようで、各社、その需要を取り込もうとしてはいますが、そもそも、そんなにマーケットが大きいとも思えません。

 

また、隣接するアパレル業界のスーツへの参入も気になるところです。

 

昨年、ZOZOがオーダースーツの通販を行い始めたのは記憶に新しいです。

サイズがジャストでないなどの不満もあって失敗に終わってしまいましたが、採寸の問題をクリアにしたサービスが今後、出てくるかもしれません。

 

大手アパレルでいうと、ユニクロもスーツ販売をやっています。

こちらは実店舗で採寸を行い、その後、ネットでオーダーする形式のようです。

 

また、イオンや西友でも低価格なスーツを販売していますし、オーダースーツということでいえば高島屋もやっています。

 

残存者利益という言葉があります。

衰退産業の場合、そこに属している企業は利益が得られないため、撤退したり、または倒産したりします。

結果、生き残った企業がその産業の売上を独占することになるという現象です。

石油ファンヒーターのダイニチなんかがその適例としてあげられたりします。

 

紳士服業界は衰退産業なのにもかかわらず、参入障壁が低く、他業種の会社が容易に新規参入できてしまうという、相当にきつい状況に置かれています。

 

各社の直近決算

 

前回の記事を書いてから今回の記事をアップするまでに時間が空いてしまい(ごめんなさい)、各社の決算が出そろってしまいました。

 

決算内容はみんなぼろぼろです。

 

青山商事(2Q) 15億円の営業赤字。またアメリカンイーグルの事業譲渡などに際し、78億円の特別損失を計上。64億円の純損失。

 

AOKI(2Q) 営業利益は前期比75.8%減。

 

コナカ(4Q) 営業利益は前期比91%減。また固定資産の減損処理を行った結果、53億円の純損失。

 

はるやま(2Q) 9.9億円の営業赤字。(ただし、例年2Qまでは赤字であることが多い)

 

各社ともこの決算には9月が入っています。つまり増税前の駆け込み需要があって、この決算ということです。

 

状況の厳しさが見てとれます。

 

 

投資すべきなのはどの会社か?

 

4社とも低PBRで好財務です。

このなかで投資すべきはどこか?

 

どれにも投資しないのが正解。

 

・・・・と思わないでもないですが、この4社のなかで選ぶのなら、それは当然AOKIだと思います。

 

このなかで、他業態がいちばんうまくいっているのがAOKIですし、また、不振の郊外型の紳士服店を快活clubに転身できるというメリットは大きいです。

たとえば、コナカはフランチャイズで「かつや」をやっているんですが、不採算の郊外型店舗をかつやにすることはできないですもんね。

店の大きさが違うので。

 

前回の記事で書いたように、小型フィットネスジムという新業態もはじめましたし、成長できる可能性があるのはAOKIだけだと思います。

それに来年の3月まで自社株買いをやっていますしね。

 

PBR基準で見たときに、いちばん評価されているのは妥当ではないでしょうか。

 

コナカがサマンサタバサの立て直しに成功すれば面白いでしょうが、望み薄ですかね。

 

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