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まぎれもない斜陽産業、紳士服業界を見てみよう(青山商事、AOKI)

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後世の人は小池百合子という政治家の最大にして唯一の政治的功績は「クールビズ」を普及させたことだと記すかもしれません。

 

クールビズ以降、ビジネスシーンでもカジュアルなファッションが好まれ、また許されるようになりました。

 

昔はビジネスではスーツという固定観念が厳然としてありました。

しかし、固定観念というものはいったん崩れてしまうと、それが強固であればあるほどに砂のようにもろいもの。

明治時代にちょんまげからざんばら頭に変わったときのように、ビジネスシーンではスーツという概念もかなり揺らいでいます。

 

また当の昔に紳士服量販店は国内で飽和状態となっています。そこに労働生産人口の減少が重なるわけですから売り上げの減少は不可避です。

 

ということで、今回は正真正銘の斜陽産業、紳士服業界のあらましを見てみようと思います。

 

大手4社の比較

 

紳士服といえば、この4社。青山商事、AOKI、コナカ、はるやま。

 

ざっとこの4社の決算を見てみましょう。

(コナカのみ18/09期。他は19/03期)

 

   時価総額 売上 営業利益 純利益 自己資本比率 PBR
青山商事 95799 250300 14629 5723 56.58% 0.43
AOKI 99986 193918 13382 5400 62.74% 0.65
コナカ 12739 65145 901 -493 65.01% 0.24
はるやま 13369 55554 1829 -248 60.15% 0.36

 (単位:百万円)

 

売上、時価総額で見ると、青山商事、AOKIがコナカ、はるやまを大幅に引き離しています。

紳士服といえばこの4社が頭に浮かびますが、上位2社と下位2社では企業規模にかなりの差があることがわかります。

 

コナカ、はるやまは最終利益は赤字。

 

一方、自己資本比率を見ると各社ともに60%前後をキープしており、厳しい経営環境であるのは事実としても好財務であるのは好印象です。

 

またPBRがマーケットからの評価であるとすると、AOKIが最も評価が高く、コナカが最も評価が低いといえるかもしれません。

 

さて、ここからは4社を個別に見ていきたいと思います。

 

青山商事(8219)

 

10年間の売り上げと営業利益の推移

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営業利益率、ROE,ROAの推移

 

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売上高は横ばい。利益率、ROEは低下傾向です。

その要因としては、改めて言うまでもなく「日本人のスーツ離れ」です。 

 決算説明資料にメンズスーツの販売データがあったので提示します。

ちなみに、青山商事のIR資料はかなり丁寧に作られており好印象でした。

 

 

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このままでは立ち行かなくなるのは明々白々の理。 

 当然、事業を多角化することで活路を見出そうとしているのですが、事業セグメント別の売り上げグラフは以下になります。

 

 

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まだまだ、ビジネスウエアの比重が大きいのが見てとれます。

ちなみに各セグメントを軽く紹介しておきます。

 

カジュアル事業 リーバイス、アメリカンイーグルなどのアメリカンカジュアルファッション。

 

カード事業 「AOYAMAカード」等のクレジットカード

 

雑貨販売事業 ダイソー&アオヤマなどの百円ショップ

 

総合リペアサービス事業 靴修理、鍵複製などのサービスを行う「ミスターミニット」を展開

 

その他事業 セカンドストリート、焼肉きんぐ、ゆず庵などのフランチャイズ事業

 

このなかで、最も利益を出しているのはカード事業になります。

2020年3月期の予測では52億円の売上高に対し、21億円の営業利益を見込んでいます。

 

それなりに順調といえるのはダイソー店、またセカンドストリート、焼肉きんぐなどのフランチャイズ店です。

これは「洋服の青山」の閉鎖店舗だったり、また駐車場などの余剰地だったりを有効活用する目的みたいです。

 

セカンドストリート等はゲオのフランチャイズ、焼肉きんぐ等は物語コーポレーションのフランチャイズなので、それほど大きな利益は見込めないでしょうが、じりじりと後退しなければいけない戦線でいかに大きく負けないか、もしくは小さな勝利を積み重ねていくかという意思の表れとみました。

 

カジュアル事業はリーバイス等のアメリカンカジュアルなのですが、これまた斜陽産業です。

ジーンズってスマホ時代にはそぐわないと思うんですよね。

女性だったらスマホはバッグに入れたりできますが、男性の場合、 尻ポケットやサイドのポケットに入れなくちゃなりません。

ジーンズは伸縮性がないから、きつくて大変です。

 

スマホに最も適しているのは、太ももの両脇にポケットがあるカーゴパンツでしょう。

大きいスマホも楽々入ります。

一度、カーゴパンツに慣れてしまうとジーンズははけないです。

 

総合リペアサービス事業は「ミスターミニット」という靴修理を行う会社を数年前に買収しています。

出退店情報を見ると、ミスターミニットは出店-退店が32といちばん多く、もっとも力を入れている事業になるようです。

ただし、先行投資期にあたるのか2017年、2018年と赤字を出しています。

 

 

AOKIホールディングス(8214)

 

PBRで見ると、紳士服業界でもっともマーケットから高く評価されているのがAOKIになります。(PBR0.65)

 

 過去10年の売り上げ営利の推移はこちら。

 

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売上は増加傾向ですが、営業利益は低下傾向。

ここは青山商事と同じです。

 

AOKIは3つの事業部門を持っています。

 

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ファッション事業  AOKI(紳士服)、ORIHICA(ビジネスカジュアル)など

 

ブライダル事業  ゲストハウスウェディング

 

エンターテイメント事業  カラオケ、複合カフェ(快活club)

 

 

各事業部門の売上高は以下の通りです。

 

 

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 青山商事に比べて、ファッション事業の比率が低いことがわかります。

 また、青山商事のファッション以外の事業がゲオや物語コーポレーションからのフランチャイズが多いのに比べて、AOKIは自社運用になります。

当然、利益率も高くなります。

 

業績の悪い紳士服店を閉鎖したあとになんらかの新業態店をオープンしなければならないわけですが、この点でAOKIは青山商事に対し、大きなアドバンテージがあるといえます。

 

ただし、AOKIの紳士服以外の事業はブライダル、カラオケに関しては苦戦しています。

希望の光といえるのが複合カフェの快活clubです。

 

 

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快活clubは全国に384店舗を構える複合カフェです。インターネットカフェにカラオケ、ダーツなどが併設されているお店ですね。

複合カフェでは2位の自遊空間が全国166店舗なので、その地位は圧倒的です。

 

AOKIはこれからも複合カフェ事業の成長に期待をかけているようで、20/03期の各業態の出退店見込みを見てみるとそれがよくわかります。

 

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ファッション事業の出退店合計がー42店舗、カラオケが-10店舗なのに対し、複合カフェ事業の出退店は98店舗です。

 

1年で約100店舗も出店するのかと驚きましたが、この100店のなかにはFit24が含まれています。

 

Fit24は快活clubに隣接した24時間営業のスポーツジムです。

 

www.fit24.jp

 

 24時間営業のジムといえばエニタイムフィットネスが有名です。

少しFit24のことを調べてみましたが、エニタイムフィットネスのシステムによく似ています。

 

www.youtube.com

 

24時間営業で好きなときにトレーニングできる。カードキーで入退場する。プールやスパ、スタジオなどはなくマシンのみ。一度、契約すれば、他の店舗も利用できる。

 

ライザップのようなパーソナルトレーナーとマンツーマンでトレーニングという形式の真逆でコンビニ型フィットネスといえます。

料金もリーズナブルになっています。

 

エニタイムフィットネスとFit24はほぼ同じ内容。

パクリといってもいいレベルで似ています。

 

エニタイムフィットネスとFit24。

私はどちらも利用したことはありません。

 

しかし、明らかにFit24のほうが優れているところが一点あります。

それは深夜や早朝に店員がいるところです。

 

エニタイムフィットネスは深夜や早朝には店員がいません。

監視カメラが何台も設置されていて、それで何か異常がないかをチェックしてはいますが。

しかし、ジムでケガをするということは当然考えられるわけで、そういうときに店員が近くにいないというのはかなり不安があります。

 

また、店員がいないことで起こるデメリットの一つが治安の悪化です。

「治安の悪化」というのはちょっと言葉が過ぎるようにも思いますが、深夜に大声で騒ぐ連中がいたりするらしいです。

これはもちろん、そのジムの立地条件によって客層が変わってくるのでしょう。

そうしたジムによる当たり外れがあるのはデメリットに感じます。

 

その点、Fit24は快活clubに併設されているので、ジムのなかには店員がいなくても隣の快活clubには店員がいます。

これは安心感という点でかなりのメリットではないでしょうか。

特に女性は深夜、早朝であっても利用しやすいと思います。

 また、Fit24の会員は1日1時間、快活clubを利用可能です。

 

 エニタイムフィットネスは現在、国内に600店舗あるそうです。すごいですね。

 

この成功の要因としては、コナミ、セントラル、ルネサンス等の大型ジムのユーザー年齢層が高めなのに対し、エニタイムフィットネスは若年層の取り込みに成功したからです。

 エニタイムフィットネスはトレーナーの指導は必要最小限。しかし今はyoutubeでいくらでも筋トレ情報を得られる時代です。

特に筋トレに興味のある若年層なら、お気に入りの筋トレyoutuberの一人や二人は必ずいるはず。

youtubeがトレーナーがわりになるわけです。

 

 複合カフェを利用するのは若年層が多いので、小型ジムとは相性がいいかもしれません。

 

次に示すのが、Fit24の出店情報です。

 

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恐ろしい勢いで出店が進んでます(笑)。


 フィットネスジムは会員数がある程度、積みあがってから利益が出るんでしょうから、今期の利益貢献は少ない、どころか先行赤字になるんでしょうが、Fit24の動向には注視していきたいと思います。

 

ということで、今回は青山商事とAOKIについて見てみました。

次回は、コナカとはるやま商事を見ていこうと思います。

 

↓ 続きです。

 

soright.hatenablog.com

 

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